Web相談事例15 【住宅売却と住み替え】3,000万円特別控除と住宅ローン控除、どちらを選ぶべき?
Q.
Risa
■ご相談内容
マイホーム購入
■ご相談したい内容
昨年、マンションを売却して戸建て住宅へ住み替えました。
マンション売却では譲渡益が出ているため確定申告が必要です。
税理士からは次の2つの選択肢があると言われました。
マンション売却で「3,000万円特別控除」を使う
→ 約350万円の譲渡所得税が軽減される
特別控除は使わず、新居で「住宅ローン控除」を受ける
→ 13年間で最大約455万円の減税になる見込み
年収的には住宅ローン控除は満額受け取れる条件を満たしています。
今すぐ税金が減る方がいいのか、長期で控除を受ける方が得なのか、どちらを選ぶのが合理的なのか教えてください。
■その他FPに伝えておきたいことなど
40代・会社員
A. 回答者:ファイナンシャルプランナー 白坂大介
■FPからの回答
Risaさん、こんにちは。
とても良い視点をお持ちですね。
住み替えをされた方がよく悩まれるテーマですが、
この問題は単純に「金額が大きい方」を選べばよいわけではありません。
ポイントは次の3つです。
① お金を受け取るタイミング
② インフレ(物価上昇)の影響
③ 先に受け取ったお金を運用できるか
順番に見ていきましょう。
① まずは単純な金額比較
今回の条件を整理すると、
3,000万円特別控除
→約350万円(今年一括)
住宅ローン控除
→約455万円(13年分割)
名目金額だけを見ると、住宅ローン控除の方が 105万円多い計算です。
しかし、この比較には重要な視点が抜けています。
それが「時間」です。
② インフレを考えるとお金の価値は変わる
3,000万円特別控除は、今年すぐに350万円の減税効果があります。
一方、住宅ローン控除は13年間に分けて戻ってきます。
平均すると年間約35万円程度です。
ここでインフレを考えてみましょう。
仮に物価が年2%ずつ上昇すると、
👉 13年後のお金の価値は、今の約77%程度
になります。
つまり同じ35万円でも、
- 今すぐ受け取る 35万円
- 13年後に受け取る 35万円
では、実際の価値が異なります。
住宅ローン控除455万円を「現在の価値」に直すと、
👉 約380万〜400万円程度
と考えられます。
【住宅ローン控除】
- 名目金額:455万円
- 実質価値(目安):約390万円
【特別控除】
- 名目金額:350万円
- 実質価値(目安):350万円
差は名目の105万円から、実質価値では約40万円程度まで縮まります。
③ さらに「運用」という視点を加える
ここで重要なのがもう一つの考え方です。
3,000万円特別控除を選ぶと、
今年350万円が手元に残ることになります。
この資金を長期分散投資などで運用した場合を考えてみます。
年3%で13年間運用した場合
350万円 × (1.03)¹³ = 約514万円
となります。
将来価値(13年後イメージ)
【住宅ローン控除】455万円
【特別控除】+3%運用 約514万円
つまり、
早く受け取ったお金は「増やす時間」を持てる
という大きなメリットがあります。
なお、年2%程度の運用でも約454万円となり、住宅ローン控除とほぼ同水準になります。
■ なぜこの差が生まれるのか
今回の本質は税制比較ではなく、
「分割でもらうお金」
と
「一括でもらって運用できるお金」
の違いです。
資産形成では一般的に、
- 早く受け取れる
- 自分で使い方を決められる
このお金の方が有利に働くことが多くなります。
■FPとしての結論
今回のケースを整理すると、
- 名目金額では住宅ローン控除が有利
- インフレを考慮すると差は縮小
- 運用可能性まで含めると逆転の可能性
となります。
そのため、
今すぐ確定する減税メリットを取り、資金を活用できる3,000万円特別控除は、十分合理的な選択といえます。
もちろん、
- 長期間確実に住み続ける予定がある
- 運用はしない予定
という場合には住宅ローン控除を選ぶ考え方もあります。
大切なのは、
「最大額」ではなく「実際の価値」で比較することです。
■FPからひとこと
税制の比較では、つい金額の大小だけを見てしまいがちです。
しかし本当に重要なのは、
お金を「いつ」受け取るのか。
同じ100万円でも、今日の100万円と10年後の100万円は価値が違います。
住み替えの判断では、ぜひ「時間」と「使い方」まで含めて考えてみてください。


