2026.09.29
300万円はどこに預ける?定期預金・個人向け国債・一時払保険・NISA・不動産特定共同事業をFPが比較

最近、普通預金や定期預金の金利が上がり、「以前より銀行に預けておくメリットが出てきた」と感じる方も増えているのではないでしょうか。
一方で、個人向け国債の金利も上がり、一時払保険やNISA、不動産特定共同事業など、まとまった資金の預け先にはさまざまな選択肢があります。
では、たとえば手元に300万円の余裕資金がある場合、どこに預けるのがよいのでしょうか。
結論からいうと、「一番金利が高い商品」を選べばよいわけではありません。
大切なのは、その300万円を「いつ使うのか」「途中で使う可能性はあるのか」「どこまで元本割れを許容できるのか」「保障も必要なのか」を整理して、目的に合う預け先を使い分けることです。
この記事では、定期預金・個人向け国債・不動産特定共同事業・一時払保険・NISAを比較しながら、それぞれの特徴と使い分け方をFPの視点で解説します。
1.まず考えるべきは「どの商品が一番増えるか」ではない
まとまったお金を運用しようとすると、つい「どの商品が一番金利が高いか」「どれが一番増えるか」という比較から始めたくなります。
しかし、資産運用では商品の比較より先に、そのお金の役割を整理することが重要です。
たとえば同じ300万円でも、
・1〜2年以内に車を買うためのお金
・5年後の住宅購入資金
・10年以上使う予定のない余裕資金
・老後に向けて20〜30年かけて育てるお金
では、適した預け先がまったく違います。
短期間で使う可能性があるお金を、値動きの大きい商品や途中解約で不利になりやすい商品へ預けてしまうと、いざ使いたいときに損失が出てしまう可能性があります。
一方で、20年以上使う予定のないお金まで全額を普通預金に預けておけば、物価上昇によって実質的な資産価値が目減りする可能性もあります。
まずは「何年くらい使わないお金なのか」を考えるところから始めましょう。

2.定期預金|近い将来に使う可能性があるお金の預け先
金利上昇局面で、改めて注目されているのが定期預金です。
日本銀行の統計では、普通預金の平均店頭表示金利は2026年9月時点で年0.322%となっています。定期預金についても金融機関ごとの差があり、キャンペーン金利などを含めると以前より選択肢が増えています。
定期預金の大きなメリットは、仕組みが分かりやすく、基本的に元本割れを心配しなくてよいことです。預金保険制度の対象となる預金については、同一金融機関ごとに一定範囲まで保護されます。
向いているのは、数年以内に使う可能性があるお金、元本割れを避けたいお金、生活防衛資金に近いお金、投資を始める前の待機資金などです。
ただし、10年、20年と使わないことが明確なお金まで定期預金だけで運用する場合は、物価上昇に対して十分に資産価値を守れるかという視点も必要です。
3.個人向け国債|元本を重視しながら一定の金利を得る選択肢
定期預金と並んで、元本割れを避けたい方が比較したいのが個人向け国債です。
2026年9月募集分の個人向け国債では、税引前の年率で、
固定3年:1.96%
固定5年:2.24%
変動10年:1.95%
となっています。
個人向け国債は額面100円に対して100円で償還され、発行後1年を経過すれば中途換金も可能です。
中途換金時には直前2回分の各利子相当額が差し引かれますが、一般的な市場取引される債券のように、売却時の市場価格によって元本そのものが大きく変動する仕組みではありません。
そのため、1年以上使う予定がなく、元本を重視しながら一定の金利を得たい資金には比較しやすい選択肢です。
なお、「個人向け国債」と、証券市場で売買される一般の国債では中途売却時の仕組みが異なりますので、混同しないようにしましょう。
4.不動産特定共同事業|比較的短い運用期間でも収益を狙える商品も
不動産特定共同事業とは、複数の投資家から資金を集め、不動産を取得・運用し、その収益を投資家へ分配する仕組みです。
商品によっては少額から参加でき、1年・2年程度の比較的短い運用期間で設定されているものもあります。また、預金や国債より高い想定利回りが提示される商品もあります。
一方、不動産特定共同事業は預金ではなく、一般的に元本保証ではありません。
主なリスク
・対象不動産の価値下落
・空室や賃料低下
・自然災害
・事業者の経営悪化
・売却価格の変動
・途中換金のしにくさ
また、同じ不動産特定共同事業でも、運用期間、優先劣後構造、対象物件、途中解約条件などが商品によって大きく異なります。
したがって、すぐに使う予定のない余裕資金で、元本保証ではないことを理解したうえで検討することが基本になります。
5.一時払保険|「円建て」と「外貨建て」は分けて考える
一時払保険は、まとまった保険料を最初に一括で払い込み、中長期で運用しながら死亡保障などを確保する保険商品です。
預金や投資商品との大きな違いは、単なる運用ではなく死亡保障などの保障機能が組み合わされていることです。
円建て一時払保険
円建て一時払保険には、比較的安定した運用を期待できる商品がありますが、市場価格調整(MVA)が採用されている場合には注意が必要です。
市場金利が上昇した局面などで途中解約すると、市場価格調整の影響によって解約返戻金が払込保険料を下回ることがあります。
そのため、「いつでも元本が保証される預金」と同じ感覚で利用するものではなく、基本的には中長期で保有できる資金で検討する商品です。
外貨建て一時払保険
外貨建て一時払保険では、市場価格調整に加えて為替変動の影響も受けます。
契約通貨では資産が増えていても、円高になれば円換算した受取額が減ることがあります。反対に円安では円換算額が増えることもあります。
金融庁も、外貨建一時払保険は中長期運用を前提とする商品であり、短期間で解約すると市場価格調整や解約控除などが運用成果を押し下げる場合があることを示しています。
一時払保険を検討するときは、
「長期間使わない資金か」
「途中解約の可能性は低いか」
「死亡保障を持つ意味があるか」
「MVAや為替リスクを理解できるか」
を確認することが重要です。
6.NISA|長期間使わないお金を育てるための制度
NISAは商品名ではなく、投資によって得た利益を非課税にできる制度です。
現在のNISAでは、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円で、併用すれば年間360万円まで投資できます。非課税保有限度額は合計1,800万円で、非課税保有期間は無期限です。
ただし、NISAを利用したから元本が保証されるわけではありません。実際のリスクは、NISAの中で購入する投資信託や株式などによって異なります。
特に、株式を中心とした投資信託などを利用する場合は価格が変動しますので、数年以内に使う可能性のある資金には向きません。
一方で、10年以上使う予定がないお金や老後資金などについて、長期・積立・分散で資産形成を行うには活用しやすい制度です。
特に若い方の場合、「今ある300万円をすべてNISAへ一括投資する」だけが選択肢ではありません。
手元の300万円は安全性を重視した商品へ分けて預けながら、毎月の収入からNISAで積立投資を続けるという方法もあります。

7.6つの選択肢を比較するとどう違う?
ここまでの特徴を大まかに整理すると、次のようになります。
| 選択肢 | 元本割れ・価格変動 | 途中で使いやすいか | 向いている期間 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 定期預金 | 低い | 比較的使いやすい | 短期 | 元本を重視する資金 |
| 個人向け国債 | 低い | 発行後1年間は制限 | 短期〜中期 | 元本重視+一定の金利 |
| 不動産特定共同事業 | あり | 商品による/低い場合も | 商品による | 比較的短期の商品もあるが元本保証なし |
| 円建て一時払保険 | 途中解約時などにあり | 低め | 中長期 | 保障+運用、MVAに注意 |
| 外貨建て一時払保険 | 為替・MVAの影響あり | 低め | 中長期〜長期 | 保障+外貨運用、為替変動に注意 |
| NISA(投資信託など) | 投資対象によりあり | 売却可能 | 長期 | 長期・積立・分散で資産形成 |
※上記は各商品の一般的な特徴を整理したもので、実際のリスクや換金条件、運用期間などは商品ごとに異なります。
8.300万円を運用するなら「3つの時間」に分けて考える
では、実際に300万円がある場合にはどう考えればよいのでしょうか。
おすすめしたいのは、金額から決めるのではなく、「時間」で分ける考え方です。
短期資金|1〜2年程度で使う可能性がある
車の購入、引っ越し、住宅購入の頭金など、近い将来に使う可能性があるお金です。
この資金は増やすことより、必要なときに確実に使えることを優先します。普通預金や定期預金などが中心になります。
中期資金|数年は使わない
すぐには使わないものの、10年以上先まで使わないとは言い切れない資金です。
個人向け国債など、元本を重視しながら一定の金利を得る選択肢が比較しやすくなります。
不動産特定共同事業は1〜2年程度の商品もありますが、元本保証ではありません。一時払保険については、途中解約時のMVAなどがあるため、さらに長く保有できるかを確認する必要があります。
長期資金|10年以上使う予定がない
老後資金や将来の資産形成など、長期間使う予定のないお金です。
この部分については、NISAを活用した長期・積立・分散投資や、中長期保有を前提とした一時払保険なども比較対象になります。
300万円だから「全部定期預金」「全部国債」「全部保険」「全部NISA」と考える必要はありません。
それぞれのお金をいつ使うのかに応じて、複数の預け先へ分けて考えることができます。
9.相談した会社が扱う商品だけで考えないことも大切
資産運用を相談すると、相談先によって提示される選択肢が変わることがあります。
銀行であれば預金や投資信託、保険代理店であれば保険商品、証券会社であれば投資信託や株式など、それぞれ得意とする商品があります。
もちろん、それ自体が問題というわけではありません。
ただ、相談者にとって重要なのは、「その会社が何を販売しているか」ではなく、「自分のお金の目的に何が合うか」です。
たとえば、本当は3年後に使う可能性がある資金なのに、利率だけを見て10年、20年の保有を前提とした商品を選ぶと、途中で資金が必要になった際に不利になる可能性があります。
反対に、20年以上使わない老後資金まですべて普通預金だけに預けておくことが、その方にとって最適とも限りません。
大切なのは、異なる種類の商品を同じ土俵で比較し、そのうえで使い分けることです。
10.まとめ|「一番いい商品」ではなく「そのお金に合う預け先」を選ぶ
金利が上がった現在、定期預金は以前より検討しやすい選択肢になっています。
一方で、個人向け国債、不動産特定共同事業、一時払保険、NISAなどにも、それぞれ異なる役割があります。
定期預金 …… 近い将来に使う資金を守る
個人向け国債 …… 元本を重視しながら一定期間預ける
不動産特定共同事業 …… 元本保証ではない代わりに、より高い収益を狙う
円建て一時払保険 …… 中長期運用と保障を組み合わせる
外貨建て一時払保険 …… 長期運用と保障に加えて為替変動も受け入れる
NISA …… 長期間かけて資産を育てる
重要なのは、商品から考えるのではなく、
「いつ使うお金なのか」
「どの程度の損失なら受け入れられるのか」
「途中で現金化する可能性はあるのか」
「保障を持つ意味があるのか」
を先に整理することです。
今回のテーマは、実際に20代半ばの方から「約300万円を定期預金にしようと思っているが、ほかにどんな選択肢があるか知りたい」というご相談をいただいたことがきっかけです。
実際の相談では、定期預金だけでなく、個人向け国債、不動産特定共同事業、一時払保険、NISAなどを比較しながら、資金を使う時期に応じて分けて考える方法をご説明しました。
実際のご相談事例はこちら
参考情報
・日本銀行「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等」
・財務省「個人向け国債」
・金融庁「NISA特設ウェブサイト」
・金融庁「外貨建一時払保険の運用パフォーマンス分析」
・国土交通省「小規模不動産特定共同事業を行う上での注意事項(投資家保護の視点)」
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。各商品の金利、予定利率、運用期間、費用、解約条件、為替リスク等は商品や時期によって異なります。実際に利用する際は最新の商品内容をご確認ください。
著者情報
白坂大介
大手ハウスメーカーでの営業職、総合保険代理店での勤務を経て、2010年に「FP Office Shirasaka」を開業。2013年にジョインコントラスト株式会社を設立。ライフプランニングを軸に、住宅購入や教育資金、老後資金など、人生に関わる幅広いお金の相談をサポートしています。 ファイナンシャルプランナーのほか、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、証券外務員1種の資格を保有。住宅・保険・資産形成などの知識を活かし、相談者一人ひとりの将来設計に寄り添ったアドバイスを行っています。


